バイクバイクにとって渋滞は拷問に近い? 低速で余裕を失わないための走り方

真夏の渋滞は、バイク乗りにはかなりつらい

バイクで走っていて、できれば遭遇したくないもののひとつが渋滞です。

特に暑い時期は、ヘルメットやプロテクターを身に着けたまま強い日差しに照らされ、足元からはエンジンの熱が上がってきます。

水冷車なら電動ファンが回り、その熱風までライダーへ吹きつけてきます。

走っていれば風が当たりますが、渋滞ではほとんど風もありません。

さらに、前の車が少し動くたびにクラッチを握り、半クラッチで進み、また止まる。その繰り返しです。

左手は疲れますし、重いバイクでは停止するたびに車体を足で支えなければなりません。

路面に傾斜やわだちがあれば、足を着く場所にも気を使います。

バイクにとって真夏の渋滞は、少し大げさにいえば拷問に近いものです。

4輪なら余裕のある速度が、バイクでは難しい

私は4輪にも乗りますが、ほとんど止まりそうな速度でも、4輪なら車体は安定しています。

ブレーキを踏みながらゆっくり進み、左右やミラー、歩行者、自転車などを確認する余裕があります。

完全に止まってしまっても、車体を自分で支える必要はありません。

一方、バイクは速度が落ちるほど、ライダーが積極的にバランスを取らなければならなくなります。

半クラッチ、アクセル、リアブレーキ、ハンドル操作、体の位置、足を着く準備。

いくつものことを同時に処理しながら、車体を倒さないようにしなければなりません。

周囲を見るために使いたい注意力の一部が、バイクのバランスを保つことに使われてしまうのです。

特に5km/h以下は忙しい速度域

低速走行の研究では、10km/hから5km/h、さらに3km/hへ速度が落ちるほど、車体を安定させるための修正操作が大きくなる傾向が示されています。

もちろん、車種や車重、重心、足つき、ライダーの経験によって違いはあります。

それでも感覚的には、

10km/h前後では、まだ比較的まっすぐ進みやすい。

5km/h前後になると、バランスを取るための操作が目立って増える。

3km/h前後では、ほとんど止まりかけの状態となり、足を着くかどうかを考えながら走る。

このような違いがあると思います。

つまり、4輪なら余裕を持って周囲を確認できる歩く程度の速度が、バイクにとっては最も忙しい速度域なのです。

だからバイクは前へ出たくなる

バイクは、少し速度が上がったほうが車体が安定します。

そのため渋滞で低速走行が続くと、無意識に「早くこの状態から抜けたい」と感じるのではないでしょうか。

前に少し空間が見えれば、そこまで進みたくなる。

車列の横に通れそうな場所があれば、前へ出たくなる。

単にライダーがせっかちだからではなく、低速走行そのものがバイクにとってストレスだから、という面もあると思います。

ただし、バイクは車体が軽く、アクセル操作に対する加速も鋭いものが多くあります。

前の車が動いた瞬間に同じ勢いで加速すると、思った以上に早く追いついてしまいます。

そこでブレーキをかけ、また3〜5km/hでバランスを取りながら進む。

前車が動くたびにこれを繰り返していると、車間距離は詰まりやすくなり、操作もますます忙しくなります。

10km/h前後なら比較的安定しやすい。しかし渋滞では難しい

先ほど触れたように、10km/h前後で進めれば、3〜5km/hで進むよりも車体は比較的安定しやすくなります。

極端な低速で長くバランスを取り続けるより、一度10km/h前後まで穏やかに速度を上げ、短く進んで止まるほうが、ライダーには楽な場合があります。

周囲を見る余裕も作りやすくなるでしょう。

しかし、渋滞路で10km/h前後を維持するのは、なかなか難しいものです。

時速10kmでは、1秒間に約2.8メートル進みます。

前に少し空間があっても、数秒で使い切ってしまいます。

前車が3〜5km/hで進んでいるところへ、自分だけ10km/hまで加速すれば、すぐに車間が詰まります。

その結果、またブレーキをかけ、半クラッチを使い、最も忙しい極低速へ戻ることになります。

つまり、10km/hをずっと維持すればよいわけではありません。

比較的安定しやすい10km/h前後で走れる短い区間を作り、3〜5km/hで延々とバランスを取り続ける時間を減らす。

そのために必要なのが、前車との間に作る「タメ」なのです。

大切なのは「タメ」を作ること

ここでいうタメとは、信号が青になっても動かず、後ろの車を待たせることではありません。

信号では周囲を確認し、普通に発進する。

しかし、前の車と同じ勢いで加速して、一気に車間を埋めない。

発進は普通に、加速は穏やかに。

また、渋滞中に前車が50センチ、1メートル動くたびに、反射的についていく必要もありません。

少し空間ができてから発進し、その中で短く進み、早めに減速してきちんと止まる。

そうすれば、極端な低速で長時間粘らずに済みます。

もちろん、後ろの車から見れば「もっと前へ詰めればよいのに」と思われることがあるかもしれません。

しかし、その圧力に合わせて車間を詰め、バランスと周囲確認の余裕を失うほうが危険です。

極端に長く止まる必要はありませんが、安全のために必要な空間まで使い切る必要もありません。

タメとは、前へ行かないための空間ではありません。

前車の細かな加速や減速を吸収し、比較的安定した状態で進むための空間なのです。

前車だけでなく、数台先を見る

目の前の車だけを見ていると、前車が動いたことに反応して発進し、止まったことに反応してブレーキをかける、後追いの走りになりがちです。

できれば、前車の窓越しや左右から、2〜3台先の流れまで見る。

前車は動いたけれど、その先が詰まっているなら、どうせすぐまた止まります。

それが分かれば、必要以上に加速せずに済みます。

渋滞路では、前車の動きだけに合わせるのではなく、車列全体の流れを読むことが大切です。

低速では半クラッチとリアブレーキを使う

どうしても極低速で進み続けなければならない場面もあります。

そのときは、アクセルの開け閉めだけで速度を調整すると、車体の動きがギクシャクしやすくなります。

少し一定のアクセルを使いながら、半クラッチで駆動力を調整し、リアブレーキを軽く当てて速度を整える。

こうすることで、駆動が完全に抜けたり、急につながったりするのを抑えやすくなります。

目線を下げず、できるだけ先を見ることも大切です。

ただし、無理に足を着かずに粘る必要はありません。

不安定になったら、早めに足を着いて一度きちんと止まる。

足を着かずに進み続けることより、余裕を失わないことのほうが大切です。

停止するときは後ろも確認する

渋滞では前ばかり見てしまいますが、後ろから追突される危険もあります。

停止するときは、できる範囲でミラーを確認する。

前車へ近づきすぎず、必要なら左右へ逃げられる空間を残す。

後続車がまだ接近している間は、1速に入れたままクラッチを握り、すぐ動ける状態にしておく。

後続車がきちんと停止したことを確認してから、長い停止ならニュートラルに入れて左手を休ませる。

このような使い分けも、渋滞での疲労を減らす方法だと思います。

長い停止では、あえて右足を着く方法もある

マニュアル車で長めの停止が続くと、クラッチレバーを握り続ける左手がつらくなります。

だからといって、左足を着いたままニュートラルに入れることはできません。

一度右足を着いて左足でニュートラルへ入れ、そのあと再び左足へ着き替える人も多いと思います。

しかし、平坦で車体を安定して支えられる場所なら、そのまま右足を着いて待つ方法もあります。

まず1速で停止し、後続車が確実に止まったことを確認する。

それから右足を着き、左足でニュートラルへ入れる。

右足で車体を支えたまま、右手でフロントブレーキを握って停止を維持する。

こうすれば足をもう一度着き替えずに済み、クラッチレバーから左手も離して休ませることができます。

停止のたびに必ず左足を着かなければならない、というわけではありません。

状況に応じて左右の足を使い分けることも、渋滞で疲労をためないための方法でしょう。

ただし、上り坂や下り坂、路面に傾斜がある場所では、右足をリアブレーキに残したほうが安定する場合があります。

また、後続車がまだ近づいているときや、車列がすぐ動きそうなときは、ニュートラルへ入れず、1速のまますぐ発進できる状態を保ったほうが安心です。

右足を着いてフロントブレーキで停止する場合も、ハンドルはできるだけまっすぐにしておきます。

状況を見ずに毎回同じ動作をするのではなく、停止時間、路面の傾き、後続車の動きを見ながら使い分けることが大切です。

面倒だからと、すり抜け続ける危険

暑い。

クラッチ操作がつらい。

低速走行が面倒。

そうなると、車列の横をすり抜けて一気に前へ出たくなる気持ちも分かります。

しかし、止まっている車列の横には、見えない危険があります。

対向車が右折車に道を譲り、その右折車が車列の隙間から出てくる。

そこへ車列の横を進んできたバイクが衝突する。

いわゆるサンキュー事故です。

右折車からは、車列の向こうを走ってくるバイクが見えません。

バイク側からも、車の間から出てくる右折車は直前まで見えません。

店舗や駐車場の出入口、中央分離帯の切れ目、横断歩道、不自然に車間が空いている場所も同様です。

歩行者や自転車が車列の間から出てくることもあります。

止まった車列の横は、空いている通路ではありません。

見えない交差点が連続している場所と考えたほうがよいでしょう。

渋滞を避けることも立派な対策

渋滞への対処は、ライディングテクニックだけではありません。

出発時間を少しずらす。

渋滞情報を確認する。

混雑する市街地を避ける。

暑さや疲れを感じたら早めに休憩する。

真夏は、無理に渋滞の中へ入らないことも安全運転のひとつです。

暑さとクラッチ操作で疲労がたまれば、低速バランスだけでなく、周囲を見る力や判断力まで落ちてきます。

渋滞では、前へ行きすぎない技術が必要

バイクはアクセルを開ければ、4輪より素早く前へ出られる場面があります。

だからこそ渋滞では、その加速力を全部使わないことが大切です。

前車の動きに反射的についていかない。

少しタメを作る。

前の空間を一気に使い切らない。

可能なら短い時間だけでも、比較的安定しやすい速度まで穏やかに乗せる。

そして前車へ追いつく前に減速し、不安定になる前にきちんと止まる。

長い停止では、後続車と路面の状況を確認したうえで、右足着地とニュートラルを使い、左手を休ませる。

前だけでなく、数台先、横、後ろも見る。

渋滞路では、速く走る技術よりも、あえて前へ行きすぎない技術、そして無駄に疲れないための工夫が必要なのかもしれません。

皆さんはバイクで渋滞にはまったとき、どのように走っていますか。

前の車の動きに細かく合わせていますか。

停止時の足やギアの使い方も含め、皆さんなりの渋滞対策はありますか。